声なき声が聴こえる

君の声なき声が聴こえる…

 

泣きたくなる程の切なさに手元を止めて

 

君の住む方へ 視界の滲んだ視線を向ける…

 

 

どうか無事でいますように…

 

どうか苦しんでいませんように…

 

 

祈りにも似た呟きが口から洩れる…

 

 

 

君の声なき声は 途切れる事を知らず

 

私の脳裏に響き続ける…

 

 

 

流行り病の熱に魘(うな)され

 

一人 病の苦しさと戦っている君…

 

 

傍に行き 寄り添う事も許されず

 

様態さえも委ねたまま知る由も無く

 

不安ばかりが膨らみ続け

 

君の声なき声は 私の中で更に暗く大きく増大する…

 

 

けれど それは全て私の心の作り事

 

病んだ心が生み出した妄想にすぎなくて

 

君は一人 強い気持ちで病と闘っているのかもしれない…

 

 

 

私が思う以上に君の心は きっと強い

 

 

そう… 弱いのは多分私だね…

 

君の傍に居てあげたいと思うのも

 

君の力になりたいと思うのも

 

多分 寂しさの裏返し…

 

 

幾つになっても永遠に変わりようのない

 

独りよがりで情けない私の本能が

 

老いた今もまだ 君を守れるつもりでいる…

 

 

 

今は只 君に会いたい…

 

 

会って 君自身の口から直接に

 

元気に話す声が聴きたいよ…

 

 

 

 

 

 

 

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