「薔薇とタンポポ」
美しい 大輪の花を咲かせる 薔薇の木の根元に
悪戯（いたずら）な風が 一粒の タンポポの種を置いて行きました・・・
その種は やがて芽吹いて 逞しく大きく育ち 綺麗な花を咲かせました・・・
日の光に顔を向け 黄色鮮やかに 伸びやかに咲くタンポポの花・・・
空を見上げて咲くタンポポの花は ある時
それはそれは 艶（あで）やかで美しく咲く 薔薇の花を見たのです・・・
あぁ なんて良い香りがして なんて美しいのだろう・・・
それに比べ 私の姿は なんて見すぼらしいのだろう・・・
タンポポは 薔薇のような美しい花になりたかったと
悲しむようになりました・・・
薔薇は 知っていました・・・
自分の根元で いつの間にか咲いている タンポポの花の事を・・・
実は 薔薇は薔薇で 明るい黄色のお日様の色をした タンポポの花を
心から 羨ましく思っていたのです・・・
まるで お日様みたいに明るく輝いて
なんて自由で逞しく 伸びやかに咲いているのだろう・・・
だって 自分が美しいのは 人の手を借りるから・・・
人の好きなように 枝を切られ
虫だの病気だのと 沢山の薬をかけられて
人の なすがままに生きている・・・
けれども タンポポは 誰の手も借りず 自分の力で 逞しく
太陽を見上げて あんなに美しい花を咲かせて 輝いている・・・
薔薇は そんなタンポポのように
強く 逞しく のびのびと 自由に生きてみたいと思ったのです・・・
タンポポは 華やかで美しい 薔薇の花に憧れる・・・
薔薇の花を知ったばかりに・・・
薔薇の悲しみも知らないで・・・
薔薇は薔薇で お日様のように明るく輝く タンポポが羨ましい・・・
タンポポの 自由な姿を見たばかりに・・・
タンポポが 人の手に刈られる恐怖に怯えているのも 知らないで・・・
読んで下さって有難うございます。
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