生きた屍(しかばね)

「生きた屍(しかばね)」

 

雪景色、ポンちゃん

 

病院の ベッドの上で

 

 

身体のあちこちに チューブを入れられ

 

 

貴女は 今 生きた屍(しかばね)となって 横たわっている・・・

 

 

 

貴女の脳が 壊れてしまった・・・

 

 

 

貴女の 底抜けに明るい笑い声も

 

 

貴女の 屈託(くったく)のない 楽しいお喋(しゃべ)りも

 

 

貴女から 消えてしまった・・・

 

 

 

名を幾度呼べど 貴女は眠ったまま・・・

 

 

僅(わず)かな余命を宣告され

 

 

今は病院のベッドの上だけが 貴女の世界・・・

 

 

 

 

食べ物を口で味わう事も出来ず

 

 

花や 季節の風景を愛でる事も もう出来ない・・・

 

 

 

 

身体のあちこちに入れられたチューブが

 

 

貴女の 逝(い)こうとする命を 淡々と

 

 

無理やり この世に繋(つな)ぎとめている・・・

 

 

 

 

生きる喜びも 幸せも 輝きも見いだせず

 

 

死ぬ事の出来ない苦しみだけが 貴女を見ていて伝わってくる・・・

 

 

 

「そろそろ帰るね・・・。又 会いに来るからね・・・。」

 

 

 

眠る貴女の耳元で 貴女の心に届けと願って別れを告げた時

 

 

 

貴女の目が 微(かす)かに開いた!

 

 

 

やっとの思いで 眠りの国から帰ろうとするように

 

 

その瞼(まぶた)に 精一杯の力を込めて 薄っすら目を開け

 

 

一生懸命 動かぬ頭を擡(もた)げようとする!

 

 

 

 

そして・・・微(かす)かに呟く声が聞こえた・・・

 

 

貴女らしい 優しい言葉が・・・

 

 

「キヲ・・・ツケテ カエッテ・・ネ・・・ キヲツケテ・・・カエッテ・・・」

 

 

 

 

動かない身体で私の方へ 頭を擡(もた)げようとしながら

 

 

何度も 何度も そう呟く貴女・・・

 

 

滅びゆく肉体の中でも 貴女の心は生きている!

 

 

貴女らしい魂は 失われていない!

 

 

どんなに 肉体は ボロボロに朽ちようと

 

 

最後の最後まで やっぱり貴女は貴女なんだ・・・と

 

 

貴女の 精一杯の気遣いに そう 思った・・・

 

 

 

 

 

 

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