冬から春へ

 

3月の 冬の冷たさ まだ消え残る空を

 

白鳥の群が声高に鳴きながら 飛び過ぎて行った

 

 

朝早く 何処へと向かっているのだろう

 

 

空気を震わせ響き渡る彼らの声は

 

何を伝えあっているのだろうか

 

長く厳しいシベリアへの旅が近い事に

 

本能が沸き立っているのだろうか

 

 

それとも互いに旅への覚悟を決め合って

 

励まし合っているのだろうか

 

 

 

もう そんな季節が来たんだね…

 

 

 

一つの時節が去る時を迎え

 

新しい季節に変わろうとしている…

 

 

 

冬から 春へ…

 

 

 

幾千年も変わらぬ営みが又一つ 繰り返される…

 

 

厳しくも 美しく

 

全てが失われようとも 新しく命は再び芽吹き

 

生きる事を繰り返す

 

 

一つ一つの命は 本当にちっぽけかも知れないけれど

 

でも それぞれが皆 それぞれに豊かな個性を持ち

 

力一杯 精一杯に生きている…

 

 

長い世の栄枯盛衰も 何事も無かったかの如く

 

時の流れとなって通り過ぎ

 

淡々と 季節は隅々にまで行き渡る

 

 

 

獣も

 

鳥も

 

魚も

 

虫も

 

微生物も…

 

 

命を授かった生き物全てが

 

巡る季節に命を託し

 

只々 精一杯に生きている!

 

 

 

そうして

 

全ての命が 待ち望んだ春が

 

もうすぐ そこに…

 

 

 

 

 

 

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声なき声が聴こえる

君の声なき声が聴こえる…

 

泣きたくなる程の切なさに仕事の手を止めて

 

君の住む方角へ 視界の滲んだ視線を向ける…

 

 

 

昨日 君の暮らす施設から

 

君が流行り病に感染したと連絡がきた…

 

君は隔離され 一人ぼっち…

 

 

 

どうか無事でいますように…

 

どうか苦しんでいませんように…

 

祈りにも似た呟きが口から洩れる…

 

 

 

君の声なき声は 途切れる事を知らず

 

私の脳裏で繰り返し響き続ける…

 

 

熱に魘(うな)され

 

一人 病の苦しさと戦っているであろう君…

 

 

なのに…

 

傍に行き 寄り添う事も許されず

 

様態さえも委ねたまま知る由も無く

 

不安ばかりが膨らみ続ける…

 

 

 

あぁ… 分かってる…

 

それは私の悪い癖…

 

君の事を思う程 悪い想像ばかりしてしまう…

 

 

みんな私の心の作り事

 

病んだ心が生み出した妄想にすぎなくて

 

君は一人 きっと強い気持ちで病と闘っているだろう…

 

 

 

私が思う以上に君の心は 大人で強いから…

 

 

そう… 弱いのは私の方だね…

 

君の傍に居てあげたいと思うのも

 

君の力になりたいと思うのも

 

みんな 私の寂しい気持ちの裏返し…

 

 

幾つになっても永遠に変わりようのない

 

独りよがりで情けない私の本能が

 

老いた今もまだ 君を守れるつもりでいる…

 

 

 

今は只 君に会いたい…

 

 

会って 君自身の口から直接に

 

元気な声が聴きたいよ…

 

 

 

 

 

 

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命のバトンを引き継いで

冬雀

全てが凍ってしまいそうな 厳寒の最中(さなか)に訪れた

 

冬晴れの とても暖かい昼下がり…

 

 

 

雀達が 日差しで雪の解けた柿の木の小枝に群れて

 

薄汚れ見窄らしくなった その小さい身体を休めていた…

 

 

 

疲れ切ってウトウトと眠るもの

 

ボロボロに乱れた羽を嘴で忙しく繕うもの

 

日差しの心地良さにピチュピチュと歌うもの…

 

 

 

厳寒の中で やっと生き抜いたもの達の

 

ほんのつかの間の安らぎの時…

 

 

 

この世の仕組みは 忍びない程に過酷で

 

そして とても意地悪だ…

 

 

 

長く苦しい日々に芯から疲れ果てた頃

 

まるで見計らったかのように 気まぐれに

 

つかの間の幸せが訪れる…

 

 

 

生かさず殺さず

 

 

わざと何者かが仕組んでいるのでは…とさえ思えてしまう…

 

 

それでも 全ての命は不思議な事に

 

気の遠くなるような太古の時代から

 

途絶える事も無く生き抜き続け

 

連綿と今の時代まで命は受け継がれてきた…

 

 

 

今を生きている命の全ては

 

長い時を生き抜いた 強い命のバトンを引き継いで

 

今 ここに存在しているのだね…

 

 

あの雀達も…

 

そして 私達人間も皆…

 

 

 

 

 

 

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闇夜の灯り

 

凍てつく冬の夜道

 

アイスバーンに 疲れた身体を強張らせながら

 

仕事帰りの車を走らせる…

 

 

 

緊張の中で運転しながらも ふと

 

視線の先の暗闇の向こう側で煌めく

 

宝石のような夜景に目を奪われた…

 

 

 

何処までも遠く広がる田んぼや畑が

 

硝子のように澄み切った キンと冷たい闇夜に覆われて

 

空気ごと凍りついている

 

 

 

その闇夜の狭間…

 

 

 

遠い暗闇の向こうの山々の麓に 様々な色の灯が

 

透明なガラス瓶越しに覗き見る零(こぼ)れた宝石みたいに光輝いていた…

 

 

 

この澄み切った闇の美しさは

 

田舎道ならではなのかも知れない…

 

 

遠くで揺らぎ 瞬く灯り…

 

 

 

その一つ一つが 人の命の様にさえ感じられる…

 

 

 

あの煌めきの一つ一つが誰かの灯した灯り…

 

あの灯りの数だけ そこに様々な暮らしがある…

 

 

 

喜びもあろう…

 

苦労もあろう…

 

 

 

それは 本当に人様々に違いない

 

 

 

それでも 帰る場所が有る幸せ…

 

 

 

寒さに凍てつく冬の夜

 

暖かい灯を灯せる幸せ…

 

 

私も早く帰って

 

夜の闇に輝く一点の

 

暖かく煌めく灯りを灯そう

 

 

 

 

 

 

 

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人生の最大事

 

貴方の頑張り…

 

私の頑張り…

 

 

それは 他の誰かの目線では

 

とても ちっぽけな働きかもしれない…

 

 

 

それでも 頑張ったって思える一日を今日も生き

 

呑むお酒が心地よく心を満たす

 

 

 

貴方も

 

私も

 

今日も一日良く働いた

 

 

 

疲れた身体とは裏腹に

 

酔いが心を解きほぐし

 

満ち足りた幸せな想いに包まれる…

 

 

 

誰の評価も必要ない

 

誰とも比べなくていい

 

誰の目線も関係ない

 

 

 

全ては己の心が決めるものだから…

 

 

 

自分らしく頑張れたと思える事

 

今日もお酒を美味しく呑める幸せ

 

 

それが私の人生には最大事

 

 

自分の人生なんだもの…

 

 

 

今日の自分の生き方が

 

自分で良しと思えたら

 

今までの人生の色んな縁や出来事も

 

全て それはそれで良かったんだって思える

 

 

生まれ生まれて

 

生きて生きて

 

 

 

過去の自分も一緒に

 

今日という人生の先端で

 

今 心満たされている

 

 

今までの人生全て纏めて今の私

 

 

だから…

 

 

今の自分の心が満たされているならば

 

人生全てそれで良し!

 

 

 

 

 

 

 

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