親雀

痩せて みすぼらしい姿の親雀が

 

柿の木の枝で待つ子雀に 懸命に食べ物を運んでいた

 

 

親の姿とは対照的に 子雀はフワフワでとても綺麗で可愛らしい

 

 

親雀が自らの命を削る想いも惜しまずに

 

大切に 大切に 懸命に守り育てた愛しい我が子…

 

 

 

私はふと母を想った…

 

 

あぁ…母はあの親雀の様だった…

 

 

 

不運な縁(えにし)の中

 

母は只々 私たち子らの為に懸命に働いて働いて

 

我が身の全てを私達へ捧げて生きてくれた…

 

 

その苦労も苦しさも分からずに

 

小さかった私らは 無邪気に親雀に食べ物を強請(ねだ)るばかりの

 

あの雛鳥と同じだった…

 

 

 

母のお陰で 空腹に泣く事も 寒さに震える事も無く

 

心までも暖かく満たされていた…

 

私ら子らは 愛に変えた母の命を頂いて育ったのかも知れない…

 

 

母が居る…

 

それだけで全てが安心で満たされていた幼いあの頃…

 

 

けれど母は病魔に侵され 逝ってしまい

 

私ら子らの心は 温かい拠り所を失った…

 

 

 

雀の親鳥が 何度も何度も

 

啄んだ食べ物を雛鳥の口へ運んでいる

 

フルフルと嬉しそうに羽を震わせ

 

口移しで食べ物を貰う雛鳥…

 

その情景に母の姿が思い出され

 

温かくも切なくて

 

優しくも悲しくて

 

永い年月が過ぎた今

 

母の想いが身に染みて伝わってくる

 

 

母の苦労に気づけなかった申し訳なさと

 

身に染みる母の愛への有難さ…

 

 

 

この命 どんな結末になろうとも

 

粗末にせずに大切に大切に

 

しっかり生ききろうと想う

 

 

それが唯一の母への恩返しと思うから…

 

 

 

 

 

 

 

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貝殻一つ…

 

砂浜の砂に埋もれて 貝殻一つ…

 

宿りし命の消えた抜け殻よ

 

(つい)の片割れ 今は何処(いずこ)

 

 

 

潮騒が響くよ 幾世も変わらず…

 

波の粒子が潮風となって漂うよ 幾千年もの遠い遠い昔から…

 

 

生まれ生まれて

 

生きて生きて

 

滅び滅びて 消えてゆく…

 

 

それでも命は

 

生まれ生まれて

 

生きて生きて…

 

 

 

砂浜の砂に埋もれて

 

命を終えた貝殻一つ…

 

 

時の過行くままに 滅びゆき

 

やがては砂と化す命の器よ

 

 

 

宿りし命は今 跡形もなく

 

対の片割れの行方も知れず…

 

 

 

潮騒は母なる海の鎮魂歌

 

潮風が運ぶ波の粒子は 命の記憶を深い眠りへと誘(いざな)

 

永い永い歳月が 全てを静かに さらさらと風化させる

 

 

 

打ち寄せる波…

 

吹きすぎる潮風…

 

そして果てしなく広がる鎮魂の砂浜が

 

只 さらさらと…

 

 

 

 

 

 

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定められ…定められ…

青柿

 

全ての命は 自分が自分であることを

定められ… 定められ…

その命を生きるしか道は無い…

 

何故 今の自分がこうして存在するのか

何故 こういう縁(えにし)の中に生まれたのか


その宿命を嫌っても 拒んでも

自分は自分でしかなく

人生の何一つも変わらない…

 

そう…


どうして?って いくら藻掻いても

自分は自分でしかないのだから…

 

花として生まれた命は 花として生き

鳥として生まれた命は 鳥として生きる…

 

授かった自分という命の縁(えにし)に

素直に従い 何一つ逆らいもせず…

 


花は花でしかなく

鳥は鳥でしかない…

 

花は花として

鳥は鳥として

その定められた自分という命を 只ひたすらに生きている…

 

そして その姿はとても健気で

胸が震える程 美しいと思ってしまう…

 

花のように 鳥のように

自分を生きるという事…

生きる事に没頭し

自分という命を只素直に生ききるという事…


その姿の健気さ 気高さ 美しさよ…

 


何をぶつぶつ考える事があろう

 

定められ… 定められ…


私として 定められた縁(えにし)の中に生まれたこの命を

花のように

鳥のように

只 夢中で生きてみれば良いだけなのに…

 

 

 

 

 

 

 

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貝のように

夏の間 開け放していた天窓から

 

秋の気配を感じさせる心地良い風が入ってきて

 

カーテンを擽るように揺らしていた…

 

 

息苦しい程に暑かった夏も もうすぐ終わろうとしている…

 

 

吹きそよぐ秋の気配に誘われたのか

 

何だか ふと無性に 暖かい紅茶が飲みたくなって

 

お気に入りのカップを出してくる…

 

 

いつからだろう…

 

一人が好きだと思うようになったのは…

 

 

 

貝のように 砂の中深く潜り込み

 

打ち寄せる潮騒のように休みなく繰り返す

 

世の中の喧騒から逃れたい…

 

 

いつからか 心が時々そう望むようになった…

 

 

夏の暑さに疲れ果てた身体が

 

秋の気配を感じて ホッと一息つくように

 

心も 長い人生を歩き疲れて

 

偶には一休みしたくなるのかも知れない…

 

 

いつからだろう…

 

 

こうして ゆっくり暖かい紅茶を飲んでると

 

自然に ほぉっと深い息が出て

 

一人静かに過ごせる時間が自分にとても合っていて

 

とても好きだと感じるようになったのは…

 

 

 

 

 

 

 

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M・S氏のお話

ツバメ巣立ち雛

貴方は淡々と自分の人生を 心のままに

 

少しの曇りも感じさせない真っすぐな視線で

 

私に静かに語って下さった…

 

何の装飾も 嘘偽りも無い貴方の言葉は

 

心の奥から直接語り掛けてくるようだった…

 

年老いて こんなに真っすぐに人生を語れる人を 私は知らない…

 

自分の欲を捨て 貧しい家を継いで生きる事を選んだ貴方…

 

そんな貴方の言葉は 静かでとても優しい

 

 

 

「兄弟が12人いてね… 貧乏な借金だらけの家だった

 

戦争を挟んで食べるものも儘ならなくて 俺は栄養が足らず身体が小さかった

 

こんなにデカくなったのはね 15歳で働くようになってから

 

貰った給料を全部食い物につぎ込んだからさ (笑)

 

 

俺は長男でね 沢山居た兄弟はみんな家を出た

 

ホントは俺も家を出て 自由に思うように人生を生きてみたかったよ

 

 

仕事に就いてから何度も転勤の話が来たけどね

 

その度 親に行かないでくれと泣きつかれて行けなかった

 

転勤しなけりゃ出世も出来ず 給料も上がらない…

 

そういう時代だったんだよ…。

 

だから行きたかったんだけどね…

 

兄弟に相談しても誰も力になってはくれなかったし

 

親に行くなと泣かれたら そりゃあ親置いて行けないよね

 

 

俺は泣いた… 泣いて諦めた

 

 

それからずっと俺は家に留(とど)まって 仕事も40年間勤めあげたよ

 

 

こんな俺に良い嫁なんか来るはずないと思ってたけど

 

それでも来てくれた嫁さんには感謝してる… 有難かったよ

 

70年連れ添った… けど先に逝ってしまった… 寂しいもんだ… 」

 

 

 

貴方は話をしながら 涙の滲んだ目を向こう側へ反らした

 

 

90歳を過ぎて尚 貴方の心は純朴で心優しい

 

私は何だか とても綺麗な宝石を見た気がした

 

 

 

 

 

 

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